万が一を考え、現在の施術が大体どういったものかはネットで事前にリサーチしていたのですが、しかしネット上で拾った2012年の情報さえ技術の進歩には追いついていませんでした。国によって多少違うのかもしれませんが…
麻酔技師に「ハイOxygen吸ってくださ〜い」とマスクで口を塞がれ、数度呼吸するうちに「うっ…なんか気持ちわるっ…」と思った時には意識を失っていたようです。
何だか喉のイガイガで目が覚め、胃の上部が痛い…もしやと思って患者服の下の自分の身体を覗いてみたのですが何も変わったようには思えません… 麻酔医師が気付いてやってきたので「これから麻酔ですか?」と聞くと「もう(手術)終わったわよ」と、患者服をはだけお腹に明いた小さな三つの穴の個所を(実際には塞いでありますが)見せてくれました…驚いた事に、その穴も糸で縫っている訳ではなく、バイオの接着剤で塞いであるらしいのです。従って「抜糸」という作業もありません。
今回の件で一番驚いたのは、やはりお国柄というべきか、その食事です。手術前の48時間の断食は前回までにお伝えした通りですが、手術後は、夜はもちろん翌朝くらいまでは食事など無いものと諦めていました。
ところが…術後3時間程経った頃「夕食で〜す」と運ばれて来たトレーを見ると、普通に固いパンとバターにジャム、インゲンの炒めもの… そしてなんと!ローストビーフですよ!?フルーツペーストのデザートまでついてます。
普段あれほど食に貪欲な私でも、流石に半分程は残しました。
翌朝、朝食時にケアテーカーが「コーヒーにしますかお茶にしますか?」と聞いて来た時にはひっくり返りそうになりました… が(ホントにいいのか?と思いながら)コーヒーをお願いし、美味しく頂きました(笑)。
そして昼食のメインがポークロティ、とは…
その日の午後には、約束通り帰宅を許されました。外科部長には「10日間程は脂っこい食べ物は避けてね」と言われましたが、にこやかな顔でそれを聞きながら「じゃあ、あの病院食はなんじゃい?」と心の中で叫びました。
これもシステムの違いなのか理解するのに時間がかかりましたが、帰宅後、処方された薬を10日間飲み続ける他、近くの看護士に電話して1週間毎日往診してもらい注射を打ってもわなければなりません。
帰宅してまず取りかかったのは、業務連絡事項です。
公式サイト登録承認待ちの方も数名いらっしゃいました。未だ自動通知メールがこちらに届かない等の不具合があるようで、一部の方にはご心配おかけしたようです。申し訳ございませんでした。
スポーツや重いものを持つ事以外普段通りの生活を、と言われてはいるものの、やはり身体に穴が空いている訳で、ちょっとした動きでもそこそこ痛みます。
前回触れたように、手術前には自分の肉体美に見惚れたものです(笑)。今までは、自分の事を「超人だ」「鉄人だ」と何の根拠も無く思っていたのですが、帰宅後、シャワーを浴びるため恐る恐る浴室で裸になると、自分のお腹の中心に何だか“目”があるようで、なんともグロテスクです。初日、2日目と、恐らく憔悴と痛みの所為で肩周りや胸板の筋肉が急速に落ち、加えて腫上がったお腹を庇うようにほんの少し腰を曲げて動くため、まるで突然ヨボヨボのお爺さんになった気分です。
「今あの患者服と白いストッキングを穿いたらまるで志茂田景樹さんだな…」と妙な考えが浮かびます。
今回の件で、手術費用はもちろんの事、仕事を含め、来月に予定していた或る1ヶ月間のプロジェクトをキャンセルせざるを得なくなったり、経済的、物理的な損失がそれなりに出ました。が、しかし、身体を思うように動かせない不便さとは裏腹に、何故か妙にスッキリとした気分です。言わば人生の中で起こりうる不可避のリスクをうまく処理し躊躇せず『損切り』できたような、そんな爽快感があるのです。
この4月に降って湧いた数日間のシュールレアリスティックな体験でしたが、今回の体験で、常に前向きで明るく、未だ言葉の不自由な私たちにもジョークを発し続け、しかし最先端の技術を躊躇する事無く迅速に平等に提供してくれるこの国(地域)と人々を、私達(私&相方)はますます好きになりそうです。


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