芸術を超える瞬間 『ランデヴー』

ここのところHantec Marketsの紹介をいつ再開しようかと考えていた所、諸事情が重なりタイミングを逃していました。やっと本日時間ができたと思ったところで月替わり…本日はAtelier de Balibari公式ウェブサイトでの「Balibariシネマ」の更新動画を紹介します。

私自身、一本の映画を製作することが(たとえ短編映画であろうとも)どれだけ大変なことか身を持って知っているつもりで、所謂「傑作」と呼ばれる映画作品は、監督の才能は勿論ですが、ありとあらゆる側面において、偶然や幸運が重ならない限り成し得ない、まさに「奇跡の賜物」であると思っています。

『男と女』で有名なクロード・ルルーシュ監督の映画は正直言って私の好みではありませんでした。日本での未公開作品が多かったという事もあるのですが、公開作の日本語タイトル(『パリのめぐり逢い』『白い恋人たち』等…)からして何だかフニャけたイメージがあって私の「食わず嫌い」を決定付けていた感もあります。
そんな監督の短編映画『ランデヴー』に偶然出会った瞬間、文字通り、頭をガンと殴られたようなショックを受けました。若い頃「才能のかけらもない」と揶揄され冷笑されていたクロード・ルルーシュが、多少有名になった後とは言え、その反骨のスピリット(仏語・esprit)が偶然や運を強引に手繰り寄せ、「芸術を超える瞬間」を産み出した希有な作品だと思います。こんな「瞬間」を目の当たりにすると、“映画”や“芸術”などを口にする自分を矮小で恥ずかしく感じ、同時にその高い志 = 精神への共感で涙が出そうになります。

パリの街並を歩いたことがある人なら、まして運転された事のある方なら(私も20年もののポンコツプジョーでパリ中を走り回ったことがありますが…)、いくら夜明けに近い時間帯とはいえ、この撮影がどれだけリスクを取り恐ろしいものであるか良く分かると思います。公式ウェブサイトに公開するには「長過ぎるシーン」ですが、まさにあっという間の8分24秒です。できればモニターを“フルスクリーン”にしてお楽しみください。

[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=-NJzrv4MaMo]

ちなみに監督のクロード・ルルーシュは、撮影後パリ市警に逮捕されたそうです。

圧倒的な“権力と物量”が「芸術を超える瞬間」を産み出すのがヴェルサイユ宮殿の前に延々と広がる「庭園」であり、一個人のまさに反骨精神が「芸術や権力なんてクソ食らえ」的に超越したのが、この『C’était un rendez-vous(待ち合わせがあったんでね)』だと思っています。

追記:デジタル撮影などあり得なかった当時、35mm映画用フィルムは最大ロール1000フィートを装填しても、最長10分程度しか撮影できませんでした。つまり10分以内にこの行程を走りきれなかったら全ては水の泡・・・というリスクもあった訳です。

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