以前に相撲を話題にしたことはありましたが、ボクシングの話題は初めてではないでしょうか。
私にとって、憧れ中の憧れ、男の中の男、といえば、『石の拳 – Manos de Piedra 』と呼ばれたこのロベルト・デュラン(Roberto Duran)でした。
パナマのスラム街に育ち、16歳でプロボクサーデビューという経歴の始まりからして、“ぬるま湯”日本に産まれ育った自分を恨めしく思った程でした。
そのやんちゃな風貌と言動から、打たれても打たれても前進する、所謂ブルファイターだと思われ勝ちでしたが、違いましたねェ〜。驚異的な防御テクニックを駆使しながら、しかし攻撃の手は緩めないという、動物的な反射神経と闘争本能の塊のようなボクサーでした。
デュランの経歴を際立たせている理由は、約10年間戦ったライト級(61.24 kgリミット)にもはや相手がいなくなり、80年代突入と同時に、次々と階級を上げながら、その体格差を物ともせず、カルロス・パロミノ、シュガー・レ イ・レナード、ウィルフレド・ベニテス、ピピノ・クエバス、マービン・ハグラー、トーマス・ハーンズといった、同時代に生きた錚々たるスーパーボクサー達 と数々の死闘・名勝負を繰り広げて来た事実でしょう。
今でもThe Best Pound-for-Pound of All Time(全時代全階級最強)に推す声も多く、事実、”歴代ミドル級最強”と言われ、デュランと名勝負を魅せ、しかもそのデュランに“勝った”マービン・ハグラー自らが、今年の米国リング誌で「最高のボクサー (”BEST BOXER”)」としてロベルト・デュランの名を挙げています。
“戦闘中”のスチルを見ても分かるように、その瞬間瞬間が美しく、そして“石の拳”が炸裂する瞬間は、戦慄を覚える程の衝撃が目にも明らかです。
16歳から50歳まで戦い続けた119戦にも及ぶキャリアには、例えばトーマス・ハーンズの右ストレート一発で前のめりにマットに沈むという戦慄的な敗戦 もありましたが、その姿さえ潔く美しく見えたものです。そしてその5年後、トーマス・ハーンズに勝ってチャンピオンの座にあった当時28歳のアイラン・ バークレーを、当時37歳のデュランの石の拳が打ち砕き、遂にミドル級(72.57 kgリミット)の頂点に立ち、4階級制覇を達成します。
『石の拳はすべてを砕く』- 今でも私の本棚にあるロベルト・デュランへオマージュを捧げた雑誌の特集号にある言葉ですが、自分が人生の岐路に立たされた時、精神的、肉体的に逆境に晒された時、「何度でも、何時でも、復活してみせる」と、自分を奮い立たせてくれる座右の銘となっているのが、この言葉なのです。
